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4 愛とはなんですか?……3

last update Last Updated: 2025-08-29 00:13:22

「ありがとうございます……」

「ずっと辛い思いをしていたんだな。ひどい親御さんだ。言い過ぎてしまったかと思ったがあれぐらいしても仕方がないだろう」

 私のことをかばってくれてすごく嬉しかった。

 今までこうして守られたことは一度もなかったから。

 彼は私の頬を手のひらで包んだ。

「美月、絶対に幸せにする」

「今でも十分に幸せです」

 本当に幸せだからこの時間が永遠に続いてほしい。

 でも不安で仕方がない。

 彼の本当の気持ちはわからないけど、今はそばにいたい。

 思わず感情が昂ぶって涙がポロリとこぼれてしまった。

「美月……。好きだ」

「私なんて……」

「そんなこと言わないでくれ。それ以上自分を卑下することを言うとキスして口を塞ぐぞ」

「えっ?」

 私の肩に手を置いて射貫くように瞳を見つめてくる。

 キスというキーワードで頭が真っ白だった。

「……というか、我慢の限界だ」

 顔が近づいてきて唇が重なった。

(や、柔らかい……)

 ファーストキスが自宅の廊下でというのは味気ないかもしれないけど、ここが楽園にいるかのような気持ちになる。

 幸せでドキドキして、頭に一気に血が昇るような感覚になった。

 そして私はどこまでも飛んでいけそうだなんて思ってしまう。

 唇が離れ、親指で私の唇に触れてきた。

 熱っぽい視線を向けられて私はクラクラしてきた。

 今、母親からの電話でどん底にいたのに、彼のキスで一気に天国に行ってしまったような感じだ。

「……もっとゆっくり距離を縮めていきたいと思っていたんだが、すまない」

 苦しそうな顔をしている。

「そんなこと、ないです」

 発言してしまって私は顔が熱くなった。

 まるで私もキスをしたかったと言っているかのようだ。

「……美月の気持ちが知りたい。好きすぎて辛いんだ」

 七瀬さんの言葉が本当だったとしたら……

 そんなに気になるならおじい様のことを本人に聞けばいいのに……

 でも聞いた瞬間、まるで魔法が解けたかのように真面目な顔をして『おじい様のためだ』と言われたらどうしようかと勇気が出なかった。

「このキスを許してくれるか?」

 私はこくりと頷く。

「これ以上のことは、クリスマスプレゼントとしてもらえるか?」

「えっ?」

 あまりにも動揺する私は見て彼は楽しそうに笑っていた。

「嫌だということをしないがよく考えといてほしい」

「……検討しておきます」

 私は恥ずかしすぎて色気のないことしか言えなかった。

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